年末調整は外注できる?代行で頼める範囲と税理士業務の線引き

記帳代行

「今年の年末調整、もう不安です」社員10〜20人くらいの会社では、社長か、経理・総務を兼ねている社員1人が、12月のいつもの仕事と並行して年末調整を抱えていることがよくあります。しかも今年(令和8年分)は、基礎控除の引上げなどの改正があり、去年と同じやり方少し変わってきます。

先に結論を3つお伝えします。

  1. 年末調整の事務作業は、外部に頼めます。
    書類の配布・回収・督促、記入内容の確認、データの整理といった手間のかかる作業を任せられます。
  2. 税理士法で「税理士業務」と定められている部分があります。
    頼む先が、この部分をどう扱っているかを確かめましょう (「年末調整の外注で頼めること・頼めないこと」で説明します)
  3. 「渡せる資料」と「今の状況」の整理から。
    頼めるかどうかは、依頼先と会社の状況しだいです。

「経理代行に、年末調整もお願いできるの?」という質問もよくいただきます。この記事では、年末調整の作業のうち外部に任せやすい部分と、税理士の業務との線引き、外注する場合の準備の進め方を、一般的な形で整理します。

目次

  1. 年末調整は外注できる?まず結論
  2. 今年(令和8年分)の年末調整で変わること
  3. 年末調整の外注で頼めること・頼めないこと
  4. 年末調整を外注するときの準備の進め方
  5. 年末調整を外注する費用の考え方
  6. 依頼先を選ぶときに確かめたい4つのこと
  7. よくある質問
  8. まとめ

外注できるのは「年末調整の事務作業」

会社など給与を払う側は、毎月の給与から所得税を差し引いて(源泉徴収して)納めています。年末調整とは、この1年間に差し引いた税額の合計と、1年間に本来納めるべき税額とを一致させる手続きです。このうち、書類を配る・集める・確かめる・データを整える、といった事務作業は外部に任せられます。

頼む先は大きく3種類

年末調整の外注先は、大きく分けて次の3つです。

頼む先特徴
税理士事務所・税理士法人税理士の業務に当たる部分も含めて相談できる。顧問先の決算・申告と合わせて見てもらえる
給与計算・BPOの代行会社書類の配布・回収・督促、毎月の給与計算とのつながりなど、事務作業の量をこなすのが得意
給与ソフト会社のBPOサービス自社のソフトと一体になった運用。電子化した年末調整に乗せやすい

どれが良い・悪いではなく、会社の規模や「どこまで任せたいか」で向き・不向きが変わります。

トータルサポートBPOは、2つ目の「代行会社」の形のサービスで、税理士法人・社労士法人が運営しています。税務申告などの士業の独占業務は、法人側が対応可能です。

国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」によると、今年の年末調整では次のような改正が行われています。ここでは、会社側の作業にどう関わるかに絞って説明します。

1.基礎控除が引き上げられた

基礎控除(誰でも受けられる所得控除)の本体が58万円から62万円に上がり、所得に応じた上乗せ(加算)の額も見直されました。令和8年分の基礎控除額は、合計所得金額(収入から必要経費や給与所得控除を引いた「所得」の合計。給与だけの人は、給与所得控除後の金額)によって次のように変わります。

合計所得金額令和8・9年分の基礎控除額改正前(参考)
132万円以下104万円95万円
132万円超 336万円以下104万円88万円
336万円超 489万円以下104万円68万円
489万円超 655万円以下67万円63万円
655万円超 2,350万円以下62万円58万円

※令和10年分以後は、132万円以下が99万円、132万円超2,350万円以下が62万円になります(国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」より)。

会社側の作業として大事なのは、去年に続き人によって基礎控除の額が違うこと、そして区分の境目と金額が去年から変わっていることです。従業員が出す「基礎控除申告書」の区分が新しい表と合っているか、給与ソフトが新しい表に更新されているかを確かめましょう。

2.給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円に

給与所得控除(給与収入から差し引ける、会社員の経費のようなもの)の最低額が、65万円から74万円に引き上げられました(令和8・9年分)。収入が少ない人ほど影響が出やすいため、パート・アルバイトの多い会社ほど、今年の精算額に変化が出やすいと考えられます。

3.扶養に入れられる家族の範囲が広がった

基礎控除の引上げに合わせて、扶養控除などの対象になる家族の所得の要件も変わりました。

家族の区分改正後(給与だけの場合の収入)改正前(給与だけの場合の収入)
扶養親族・同一生計配偶者所得62万円以下(136万円以下)所得58万円以下(123万円以下)
特定親族所得62万円超123万円以下(136万円超197万円以下)所得58万円超123万円以下(123万円超188万円以下)
勤労学生所得89万円以下(163万円以下)所得85万円以下(150万円以下)

改正で新たに要件を満たした家族は、控除を受けるために「扶養控除等(異動)申告書」を出す必要があります。 そのため今年は申告書を集める前に「家族の状況が変わっていないか、改正で対象になる人がいないか」を従業員に声かけしておくことが大切です。

なお、特定の従業員の家族が扶養に入れるかどうかは、個別の状況で変わります。判断に迷う場合は、税理士にご相談ください。

働く人の側から見た「年収の壁」の変化は、「変わった「年収の壁」どう対策する?」で解説しています。

4.23歳未満の扶養親族がいる人は、生命保険料控除の上限が上がる

年齢23歳未満の扶養親族がいる人は、令和8・9年分の一般生命保険料控除の上限が4万円から6万円に引き上げられました。新しい契約(新生命保険料)の控除額の計算も変わります。生命保険料控除全体の上限12万円は変わりません。会社側では、保険料控除申告書を確かめるときに、23歳未満の扶養親族がいるかどうかも見ておく必要があります。

5.12月1日施行。11月までの源泉徴収はそのまま、12月の年末調整でまとめて精算

これらの改正は、原則として令和8年12月1日に施行されます。11月までの毎月の源泉徴収(給与からの天引き)には変更がなく、12月の年末調整で、改正後の控除額を使って1年分をまとめて精算します。

そのため今年の12月は、例年より精算の差額が出やすいと考えておくとよいでしょう。
また、令和9年分からは「源泉徴収税額表」も改正されます。来年1月の給与計算までに、給与ソフトの税額表が新しくなっているかを確かめておきましょう。

6.改正の年は、従業員からの質問が増える

「去年と同じ書き方でいいの?」「うちの家族は対象になる?」と、改正の年は質問が増えがちです。国税庁のホームページには、従業員に配れる「年末調整を受ける際の注意事項」や、各申告書の記載例が掲載されています。申告書を配るときに1枚添えておくと、聞き返しが減ります。それでも出てくる質問に「誰が答えるか」は、外注するかどうかを考えるうえで大事な論点です。次の章で詳しく見ていきます。

改正への対応が不安な場合は、今年の状況をお聞かせください。無料相談はこちら

年末調整の外注で頼めること・頼めないこと

年末調整の作業の流れ

年末調整の作業を、一般的な流れの順に並べると次のとおりです。外注するときは、この表のどこからどこまでを依頼先に任せ、どこを社内に残すかを決めていきます。

時期の目安作業依頼前に決めておきたいこと
10〜11月対象者の確認、申告書・案内の配布配布物・案内文を誰が用意するか
11月申告書・控除証明書の回収、督促回収の方法(紙・Web)、督促を誰がするか
11〜12月記入内容と証明書の突き合わせ、不備の連絡不備の連絡を依頼先から従業員に直接するか、社内の窓口経由にするか
12月年税額の計算、過不足の精算計算を誰が担うか、いつの給与で精算するか
12〜1月源泉徴収票・給与支払報告書・法定調書の作成と提出作成・提出を誰が担うか
1月預かった税金の納付納付書の準備と納付の段取り

※給与支払報告書は、従業員の住民税を計算するために市区町村に出す書類です。法定調書は、税務署に出す、支払いの内容をまとめた書類です。

書類の配布・回収・督促や、データの入力・整理といった事務作業は、外部に任せやすい部分です。一方、年税額の計算や源泉徴収票などの作成を誰が担うかは、依頼先によって扱いが異なります。依頼する前に、依頼先に確かめておきましょう。

会社に残ること

外注しても、会社がやること・決めることは残ります。

  1. 給与を払う会社としての手続き
    源泉徴収と年末調整は、給与を払う会社の側が行う手続きです。作業を外部に任せても、会社の手続きであることは変わりません
  2. 従業員への最初の案内
    社内で誰が窓口になるかを決めておきます
  3. 過不足の精算と、税金の納付
    年末調整で出た差額を、従業員に返す(還付)か、給与から差し引きます(徴収)(No.2662)。いつの給与で精算するかは、依頼先と決めておきます
  4. 個人情報を渡すときの社内ルール
    従業員のマイナンバーや家族の情報を外部に渡すことになるため、受け渡しの方法を決めておきます

税理士でないとできないこと

税理士法では、他人の求めに応じて、税に関する次の3つの事務を業として(仕事として)行うことを「税理士業務」と定めています(第2条)。そして、税理士・税理士法人でない者は、法律に別段の定めがある場合を除き、税理士業務を行ってはならないとされています(第52条)。

税理士の業務税理士法での内容(要約)
税務代理税務署などへの申告などについて、代理・代行すること
税務書類の作成税務署などに出す申告書などの書類を作成すること
税務相談申告などに関し、課税標準(税額計算のもとになる金額)や税額などの計算について相談に応じること

国税庁も「非税理士により行うことが禁止されている税理士業務」として、同じ内容を案内しています。年末調整では、たとえば次のような「判断」が入りやすい場面があります。

  • 従業員から「この家族は扶養に入れられますか?」と聞かれた
  • 「この保険は控除の対象になりますか?」と聞かれた
  • 申告書の記入内容が、証明書や去年の情報と合わない

こうした質問に誰が答えるのかを、依頼する前に決めておくことが大切です。年末調整のどの作業が税理士の業務に当たるかは、作業の内容によって変わるため、この記事では判断できません。個別の判断は税理士にご相談ください。

記帳代行を選ぶときに「専門家の体制があるか」を確かめるのと同じ考え方です。詳しくは「記帳代行とは?メリット・費用・選び方」もあわせてご覧ください。

外注する場合の一般的な準備と順番をまとめます。

  1. 依頼先に相談する
    従業員数、使っている給与ソフト、去年の年末調整のやり方、困っていることを伝え、どこまで頼むかを話し合います
  2. 頼む範囲と、社内の窓口を決める
    「年末調整の作業の流れ」の表をもとに、どの作業を任せ、どこを社内に残すかを決めます。従業員からの質問を誰が受けるのかも、ここで決めます
  3. 資料を渡す
    下のリストのような資料を、決めた方法(クラウド・郵送・対面など)で渡します
  4. 従業員に申告書を配る
    改正の年なので、国税庁の「年末調整を受ける際の注意事項」などを添えると、聞き返しが減ります
  5. 回収・チェックを進める
    不備の連絡の流れ(依頼先から直接か、社内の窓口経由か)を決めておきます
  6. 精算と年明けの手続き
    過不足の差額を精算し、預かった税金を納めます。そのあと、源泉徴収票の交付や給与支払報告書・法定調書の提出が続きます

※状況に応じて、手順が前後したり変わったりすることがあります。

年が明けると、従業員への源泉徴収票の交付や、市区町村への給与支払報告書の提出など、1月中に済ませる手続きがあります。年末調整は12月で終わりではなく、1月の手続きまでがひと続きだと考えておきましょう。

依頼先に相談するとき、手元にあるとよいもの

必要な資料は依頼先や頼む範囲によって変わりますが、一般的には次のようなものを聞かれることが多いです。

  • ☐ 従業員名簿(入社日・退職日、扶養の状況)
  • ☐ 今年の給与・賞与の支給データ(給与ソフトのデータ、または賃金台帳)
  • ☐ 去年の年末調整の資料(源泉徴収簿、扶養控除等申告書)
  • ☐ 今年入社した人の、前の勤め先の源泉徴収票
  • ☐ 今年の申告書類(基礎控除申告書・配偶者控除等申告書・所得金額調整控除申告書、保険料控除申告書、住宅ローン控除の申告書と証明書)
  • ☐ 使っている給与ソフトの名前と、ログイン情報の共有方法
  • ☐ 社内の窓口になる人の名前と連絡先

すべてがそろっていなくても、まずは「何があって、何がないか」が分かれば、相談は進めやすくなります。

今年は社内でやるときの、来年に向けた準備

今年は社内でやり切ると決めた場合も、その経験は来年に生かせます。

【どこに時間がかかったかをメモしておく】回収・督促なのか、チェックなのか、従業員からの質問なのか。来年どこを頼むかが決めやすくなります。
【給与計算と一緒に、年の途中から引き継ぐ】毎月の給与計算から任せておけば、12月に慌てずに済みます。
トータルサポートBPOでは、1か月目に引継ぎ、2か月目に並走、3か月目から実践、という流れで進めています。

今年分を頼めるか、来年から整えるか。まずはご相談ください。

従業員数や、今の給与計算のやり方をお聞かせいただければ、どこから外に出せるかを一緒に整理します。

無料相談はこちら

年末調整を外注する費用の考え方

一般的な料金の決まり方

年末調整の外注費用は、「基本料金」と「従業員1人あたりの料金」を組み合わせて決まる形が一般的です。金額は、次のような条件で変わります。

  • 対象になる従業員の人数
  • 頼む範囲(配布・回収から任せるか、一部の作業だけか)
  • 申告書を紙で集めるか、Webで集めるか
  • 従業員からの質問対応まで含むか

給与計算を含む経理代行の費用の考え方は、「経理代行の費用相場はいくら?記帳代行との違いも解説」でまとめています。

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依頼できる業務や時間制プランの考え方は、「バックオフィス代行とは?費用相場と外注の始め方を解説」でも紹介しています。

1.税理士の業務に当たる部分をどう扱っているか

計算・帳票の作成・質問対応を誰が担うかを確かめます(「年末調整の外注で頼めること・頼めないこと」を参照)。

2.従業員からの質問に誰が答えるか

人事部のない会社では、質問がすべて社長に集まりがちです。依頼先が直接受けるのか、社内の窓口が受けて依頼先に聞くのか、最初に決めておくと12月がぐっと楽になります。

3.前後の作業までつながっているか

年末調整は、過不足の精算、年明けの納付、源泉徴収票・給与支払報告書・法定調書の作成までつながっています。毎月の給与計算や住民税、経理とまとめて頼めると、引き継ぎの手間が減ります。

4.資料の受け渡し方と、個人情報の扱い

従業員の個人情報を渡すことになるため、クラウド・郵送・対面など、どの方法で受け渡すかを確かめておきましょう。トータルサポートBPOでは、大阪エリアは対面、全国はオンラインで対応しています。

よくある質問

Q. 経理代行で年末調整もしてもらえますか?

依頼先によって、年末調整のどの作業まで対応しているかは異なります。トータルサポートBPOは税理士法人・社労士法人が運営するバックオフィス代行で、給与計算などの事務作業に対応しています。税務申告などの士業の独占業務は、法人側が対応します。年末調整についても、まずはご相談ください。

Q. 年末調整の代行に資格はいりますか?違法になりませんか?

税務代理・税務書類の作成・税務相談を、他人の求めに応じて業として行うことは、税理士・税理士法人にしか認められていません(第2条・第52条)。年末調整の代行のどの作業がこれに当たるかは内容によるため、この記事では判断できません。依頼先に「誰が担うか」を確かめ、個別の判断は税理士にご相談ください。

Q. 従業員が申告書を出してくれない場合はどうなりますか?

国税庁のタックスアンサーによると、年末調整の対象になるのは、「扶養控除等(異動)申告書」を年末調整を行う日までに提出している一定の人です(その年の給与が2,000万円を超える人などは対象外)。出していない人は年末調整の対象にならないため、回収が遅れている人には早めに声をかけましょう。

Q. 年末調整を電子化するのに、税務署への申請はいりますか?

国税庁のFAQによると、令和3年4月1日以降は、従業員から申告書をデータで受け取る場合でも税務署への申請は不要になりました。ただし、データで受け取るための一定の準備は必要です。来年に向けて検討するとよいでしょう。

まとめ|今年の年末調整は「何を渡せるか」の整理から

  • 年末調整の配布・回収・督促・データの整理といった事務作業は、外部に任せられる
  • 税理士法で「税理士業務」と定められている部分がある。どの作業を誰が担うかを依頼先に確かめる
  • 今年は基礎控除の引上げなどの改正があり、12月の精算と、申告書の回収前の声かけがいつもより大事になる
  • 外注するなら、まずは渡せる資料と今の状況を整理する

今年分を頼むか、来年から整えるかを決めるのが最初の一歩です。

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参考文献・出典